心の病気について

心の病気は、誰でもかかる可能性のある病気です

心の病気で病院に通院や入院している人は、おおよそ40人に1人の割合です。生涯を通じて5人に1人がかかるともいわれています。心の病気は特別な人がかかるものではなく、誰でもかかる可能性のある病気なのです。
心の病気にかかったとしても、多くの場合は治療により回復し、安定した生活を送ることができるようになります。最近では効果が高く副作用の少ない薬も出ています。体の病気と同じように医療機関で治療を受けることが必要です。
心の病気は、本人にも理解しにくく、また、周囲からもわかりにくいという特徴があります。そのために我慢したり、無理なことを続け、病状を悪化させてしまうこともあります。みんなで心の病気を正しく理解してゆくことが大切です。

アルコール依存症

アルコール依存症の問題はとても身近で、誰もがかかる可能性のある心の病気です。もともとは健康な社会人として生活してきた人が、お酒を飲み続けることにより、飲酒が習慣化し、いつのまにか心をとらわれ(依存)ていきます。次第に人としての思いやりや誇りを失い、いつしか周囲の人から疎まれるようになります。自身の健康は勿論のこと、仕事や家庭までも失い、それでもまだお酒を断つことができない…つまり自己コントロール不能に陥った状態になるのです。一度依存症になると、普通の酒飲みに戻ることはできません。一旦断酒をしたとしても、再度飲酒すると元の依存症に戻ってしまう怖い病気なのです。しかし、断酒の継続により健全な生活に戻ることのできる治療可能な病気でもあります。ご本人の断酒への強い意志と家族等の周囲のサポートの中で、専門的治療を受けていただくことが大切です。アルコール依存症の治療は、外来では精神療法と薬物療法、入院においてはリハビリプログラムを中心に進めていくことになります。

厚生労働省によると、アルコール依存症の疑いのある人は全国で約440万人、治療が必要な人は約80万人、そして治療を行っている人は約4万人となっており、医療機関を受診していない患者が非常に多い状況です。国においては、アルコール依存症は本人の健康問題だけでなく、その家族への深刻な影響や重大な社会問題を生じさせる危険性が高いとして、2014年にアルコール健康障害対策基本法、2016年にそれに基づく基本計画が策定されました。新潟県においても2019年に新潟県アルコール健康障害対策推進計画が策定され、総合的かつ計画的にアルコール健康障害対策が推進されているところです。

アルコール依存症についてさらに詳しく

睡眠障害

睡眠は健康にとってたいへん重要で、心身の疲労回復だけでなく、記憶を定着させる、免疫機能の強化等の役割も持っています。一晩か二晩眠れないことは誰にでもあります。睡眠の問題や日中に眠気により生活に支障をきたす状況が1ヶ月以上続くとき、何らかの睡眠障害にかかっている可能性があります。不眠の原因は、環境や生活習慣によるもの、精神的・身体的な病気によるもの、精神症状によるもの、薬によって引き起こされるもの等、様々です。睡眠障害はその疾患により治療法が異なります。「眠れない」=「睡眠薬治療」ではありません。その原因を症状と客観的な情報をもとに整理、検討して適切な診断と治療につなげていきます。一人だけで悩んだり我慢せず、医療機関の受診が大切です。

うつ病

生活の中で、何かのきっかけで憂うつになることは誰でもあります。しかし、一日中気分が落ち込んでいる、眠れない、食欲がないといったことが長く続いている場合は、うつ病の可能性があります。うつ病は精神的ストレスや身体的ストレスが重なるなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。脳がうまく機能してくれないので、ものごとを否定的に考えたり、自己嫌悪に陥り、普通のことすらも辛く感じてしまい、さらに悪循環が起きていきます。うつ病は、精神論や気持ちの持ち方で解消できるものではないのです。医師の診察を受け、適切な治療を受けることが必要になります。診察においては症状、ストレスを感じていること、生活の様子、ご本人の性格やご家族のこと等をお聞きし、その情報をもとに治療方法を決定します。うつ病の治療は、休養、薬物療法、精神療法が基本となり、それを組み合わせて治療を行っていきます。

双極性障害(躁うつ病)

うつ病だと思っていても、極端に調子がよく活発になる時期がある場合は、双極性障害(躁うつ病)が疑われます。双極性障害ではハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返します。躁状態になると気分が異常に明るくなる、夜も眠らないで活動する、自分が偉大な人物であると感じる、必要以上にお金を使うといったことがみられます。躁状態では気分がよいので、病気の自覚がありません。そのため、うつ状態では病院を受診するのに、躁状態では受診しないことが多くあり、双極性障害を悪化させてしまうことが多くみられます。本人だけでなく、周囲の人も躁状態に気づくことが大切になります。診察の流れはうつ病と同様ですが、ストレスが原因となる病気ではないので、薬物療法を中心にして治療を組み立てていきます。

統合失調症

統合失調症は、心や考え方がまとまりづらくなってしまう病気です。そのため、気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症の症状は大きく2つに分けられます。健康な時にはなかった状態が表れる陽性症状と、健康な時にあったものが失われる陰性症状があります。陽性症状の典型は、幻覚と妄想で、幻覚の中でも現実にはない声が聞こえてきて、話しかけられたり、命令されるなどの幻聴が多くみられます。陰性症状では、意欲の低下、嬉しい、楽しい、悲しいなどの感情表現が少なくなるなどの症状が見られます。統合失調症の原因ははっきりとわかっていませんが、脳の機能障害によって起こる病気であることが明らかにされつつあります。脳内で様々な情報を伝えるための「神経伝達物質」のバランスの乱れが関係しているのではと考えられています。統合失調症の治療は、薬物療法、精神療法、リハビリテーションを中心に進めていきます。治療薬において効果の高いものが多く開発されてきています。リハビリテーションには作業療法(入院・外来)やデイ・ケア(外来)などがあり、体力や集中力、生活リズムを取り戻し、社会生活機能の回復を図ります。早期に治療を始めることで、その人らしい生活が送れるまでに回復することができます。ご本人やご家族だけで抱え込まず、専門医療機関への相談、受診が大切です。

パニック障害(不安障害)

突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震え等の発作を起こし、そのために生活に支障が出てくる状態をパニック障害といいます。この発作は死んでしまうのではないかと思うほど強くて、自分ではコントロールできないと感じます。そのため、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになり、特に電車やエレベーター等の空間では、逃げられないと感じてしまうので、外出できなくなってしまうこともあります。何のきっかけもないのに、このような症状が起き、内科的な病気を疑って検査をしてもまったく異常がないため、誰にも理解されずつらい思いをする人も多いと思います。一生のうちにパニック障害になる人は100人に1~2人と言われており、珍しい病気ではありません。また、男性よりも女性に発症しやすい病気です。治療としては、薬物療法と精神療法の併用が重要です。薬で発作が起こらなくなってきたら、医師と相談しながら少しずつ苦手なことに慣れていくようにしていきます。

適応障害

適応障害は、ある状況や出来事にうまく適応できず、その人にとってはとてもつらく耐え難く感じられ、そのために気分や行動に症状が現れるものです。たとえば憂うつな気分や不安が強くなり、涙もろくなったり、過剰に心配したり、神経が敏感になったりします。また、無断欠勤や無謀な運転や喧嘩、物をこわす等の行動がみられることもあります。ストレスとなる原因がはっきりしているので、その原因から離れると、症状は徐々に改善します。しかし、その原因から離れられない状況では、症状が慢性化することもあります。適応障害の治療は、ストレス原因の除去または軽減を行う環境調整、精神療法によりストレス原因への適応力を高めること、症状に合わせた薬物療法等によって進めていきます。

認知症

認知症は、正常であった記憶や思考などの能力が、脳の病気や障害のために低下していく病気です。認知症にはいくつかの種類があります。一番多くみられるのがアルツハイマー型認知症で、脳神経が変性して脳の一部が委縮していく過程でおきる認知症です。次いで多いのが脳梗塞や脳出血等の脳血管障害による血管性認知症です。65歳以上の認知症患者は240万人を超えているという推計もあり、高齢社会の日本ではますます増加することが予想されています。今のところ認知症を完全に治す治療法はありません。できるだけ症状を軽くし、進行を遅らせることが現在の治療目的となります。治療は薬物療法とリハビリテーションが主体です。認知症は軽度の段階から治療を開始すること大切です。おかしいと思ったら念のために医療機関を受診することが、早期発見、早期治療につながることになります。

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